最期の愛

「我が子じゃなかったら、お前のこと大嫌いだよ。関わりたくもない。」

 

母が今日私に言った言葉。

私は今日母を傷つけたつもりなんてなかった。いつも通り楽しく話しただけだと思っていた。いや、むしろいつもより気をつかっていたし母が楽しんでくれるように頑張ったはずなのに、無意識に傷つけていた。本当にショックだった。

母の愛が形骸化していることは最初から知っている。「我が子を愛さなければいけないから」「育児放棄は罪だから」「何とかして無理矢理にでも愛してる振りをしなければ」そんな思いで構成された愛だと知っていた。

再婚して前の夫との子供ではなく、自分の子が欲しいだけの父と、親戚に「やっぱり今の旦那さん子供がないのは可哀想よ」と言われたから仕方がなく作った母との間の私に最初から愛はなかった。いつだって母は「お前が私の人生を奪った」とか「お前がいなければ幸せになれた」って言う。最近も、「本当は産みたくなった。子供嫌いだし、お前は望んだ子にならなかったし」なんて言うから、罪悪感に殺されそうになってしまった。

「生まれてきてごめんなさい」

そればかりが私の頭の中を駆け巡った。何も無い私の人生はきっと償いのためにあるんだと思った。もし、そうじゃないならあまりに残酷だ。だから誰よりも愛を信じた。誰よりも愛を語った。人を愛したくて、愛されなくても私は愛そうとした。

それでもダメだったんだ。

私の発する言葉が、私の何気ない一言が、誰かを無意識に傷つける。両親からの愛どころか、親戚も友人も恋人さえも、愛は貰えない。誰もが愛想を尽かす。

こんなのはあんまりだと思った。だってこれじゃあまるで、私自身そのものが人としての欠落品。

生きていてはいけないみたいだ。

私はこんな色のない世界を愛して生きていく自信がなくなった。私だけが愛をこめても、一方通行の世界で何を願って、何を頼りに歩けばいいのか分からない。だから考えるのをやめた。愛することをやめた。誰の言葉も何もかも信じないことにした。

でもそれはもっと、寂しさが増すだけだった。孤独が深まるばかりで救いは永遠に来なかった。自分で自分の首を絞めてるようで息苦しい。でもその息苦しさから逃れる術はない。こんなのはもう生きてる意味がない。

ああもう死んでしまおう。

そう思った。そうしてすべてを忘れて来世だ。これでおしまい。来世では愛されたいなあ。でももしかしたら、人なんて永久に愛せないのかもなあ。なんて考えた。でも怖かった。死ぬことは想像よりはるかに怖い。足がすくんで進めない。

結局生きてしまった。命を絶つことを自分が惜しいと思っていることがなんだかおかしくて笑えてしまった。でも途端に涙が溢れて寂しくて悲しくてああこんな世界から救われたいと、ふと思った。

 

だから祈ってしまったんだ。

思わず私は「愛されたい」と縋ってしまったんだ。取り残された世界でいるかどうかも分からないカミサマに。そのカミサマはみんなを愛してくれるって、誰も愛してくれなくてもカミサマは愛してくれるっていうから、甘えてしまった。それがたとえ、私の思い込みに過ぎなかったとしても構わない。だってここに愛は存在しないと知っているから。

 

ねぇカミサマ。あなたは私を見捨てないでね。

私はあなたを愛するから。