思考停止

人間が苦手とはどういう感覚か。

僕は最近、知人に恋人との所謂惚気話というものを聞かされていた。惚気話…例えば、手を繋いだとかキスをしたとか、愛し合ったとかそれが上手かったとか下手だとか、旅行に行った、ディズニーに行った、お揃いの服を買った、デートでこんなことをしたとか…まあありふれた惚気話だ。そんな話は酒がまずくなるなあなんて思いながら相槌をうっていたわけだけれど、それらをなんとなく自分に当てはめたら少しは共感して楽しく思えるのではないかと考え聞きながら頭の中で動作を自分に変換してみた。しかしそれが問題だった。不味いなあと思っていた酒が美味しくなるどころか、吐き気に変わってしまった。

自分が誰かと手を繋ぎ、笑い合い、愛し合い、信頼し合い、頼り合う。違和感のオンパレード。心を通わせてると考えるだけで不快感、手を繋ぐだけで胃が痛くなる、キスなんてしたら吐きそうだ…愛し合うなんてとんでもない。そこまで至って不快感を隠すように苦笑いしながら目の前の知人に集中を戻すと何とか平然を装えそうだった。でもなんだこれは?僕は普通に今まで恋人がいたこともあったしその想像した一連の動作はすべて自分で経験したことがある。それなのに恋人を欲しいと思わなくなって一年、恋愛というものに対して、愛というものに対しての不快感が膨れ上がっているようだ。吐き気まで催す程にどうやら僕は人間からの感情が苦手なようだ。

自分自身ですら、この人好きだなあとちらと少しでも思ったならば途端に気持ち悪さに襲われるようになっている。こんな感情は何れにしてもろくなことにはならない、嘘だ、瞞しだ、そんなものを信じるな、そういう声が内側から聞こえてきてどうにも自分の感情を受け入れられない。受け入れたとしてもその場限りでその数時間後には嫌いになってたりする。自分のことがよくわからない。他の人ももちろんわからない。人間なんて理解ができないことばかりで、僕は人間を嫌いなわけだけれど、嫌いというよりは得体の知れない未知の生物のような意思疎通のできない何かのように見えて気味悪いのだ。そう、人は気持ちが悪い。見ているだけでぞっとする。その人間の理解不能な感情に少しでも干渉したのならあまりの奇妙さに笑えるほど。そりゃあ僕も人間であるから何を言ってるんだという感じだが、そもそも僕が人間であることすらいまいち分かってないのでどうしようもない。人間は怖いのだ。僕にとって恐怖でしかない。共感もできなければ、受け入れることも出来ないらしいので人間に関しては諦めることにしている。

信頼、愛、情、こういうのは一体何なのだろう。存在しているのだろうか。目に見えない測ることもできない、ましてや大半が形骸化していて何も無いかもしれない。それなのにどうして夢中になるのだろう。盲目的に人間は誰か他の人間にそのような感情を抱くのか。ほとんどが裏切りによって返されるのに何に執着するんだ?何に期待をするんだ?その先に何を見ているんだ?

 

僕は黙ってニコニコと思考停止するしかない。