創造

鏡を通して繋がる、溶け合う世界と自意識。幻想かはたまた夢か。

つまらない現実を忘れて目を閉じる。息を止めて三十秒、空想の中で見える世界がある。僕だけが見える反転の世界。見えているものが他人は知らない、僕に映る幻。頭の中に花が咲く感覚を得てその中を様々な正体不明の怪物が暴れまわり、溢れ出てくるイメージと僕の世界の入り口。まるで知らない自分と踊っているようだ!新世界で僕は僕と手を取りぐちゃぐちゃな空気の中で息を止めて踊り狂う。一面を埋め尽くす薔薇の棘の痛みも忘れてステップを踏む。独壇場では何もかもが見えるんだ。もう一人の僕はひどく冷たい顔をしてにやりと笑う。嘲笑うかのように僕に「目を覚ませ」と語りかける。その蛇のような瞳に光はない、そこには情も愛もない。冷酷で残酷なその瞳に囚われたら逃げられない。その瞬間、世界の色が反転した。そして目を見開く。なだれ込む日常と淀んだ空気、つまらないつまらないつまらない。

その瞬間に空を見上げるといつも聞こえていた。ずっと以前から鐘の音が。空から降ってくる音。自分にしか聞こえていないらしい。不思議で不気味ででも儚く、心が高鳴る音。

今日もいつも通りなっているなと思って空を見つめていると、とつぜん、いつも以上にひどく鳴り響いた。ボォォォォン…ボォォォォン…頭が割れそうだ。周りは耳を塞いで唖然としている。どうやら今回は聞こえているようだ。僕はとっさに思った。ついにきた。このときが。

僕は立ち上がり人目なんか気にせず声高らかに叫んだ。

「アポカリプティックサウンドさ」

天使の舞う光、美しい終焉と響く鐘の鈍い音。鳥は死に木々は枯れ、水は荒れ狂い空は叫び続ける。人々は逃げ惑い、絶望と恐怖…そして祈りを涙を流しながら天に乞う。僕は頭の中の僕と手を硬く繋ぐ。低くそして美しい音色。音階もなければリズムさえないのに涙が出るほどの燦爛たる情景。死にぞこないの目にともる光はまさに天から差し伸べられた救いの手。青空を掻き分けて君はやってくる。天使。頭上の輪がきらきらと輝き透き通るように白い羽、ハープのような声と感情の見えない冷たい顔。恐ろしく綺麗だ。

「世界がついに終わるんだ」

高揚する。ドキドキと打つ胸、自然とこぼれる笑顔、にひぃと笑う。手が震え、体は熱く、軽い過呼吸に陥るほど。このときを待っていた。ずっとずっと待っていた。思わず僕は僕の手を離した。すると消えてなくなり僕の前にあの美しい君が現れた。天使よ。君に会いたかった。ああ、頭の中の僕は天使だったのだ。僕に囁く天使だった。終末を知らせるためにやってきたんだ。大丈夫、もう怖いことなんてない。終わるのだから。さあ退屈な世界を壊して創造者になるんだ。僕が始める世界。きっとこれは終わりであって始まりの音。

嗚呼、この終末のラッパを今までずっと吹いていたのは僕自身だったのか。